I got the fascinating novel.
Writer's name is negima Makino.
「懲りない人々」
先輩に言われた公園に入って、今はもう散っている桜並木を抜けると、人工池の近くに先輩達はシートを広げて花見ならぬ、宴会を開始していた。
大きな水色のシートには、男女取り混ぜて20人程だろうか。
男性の割合が多いのは、外で宴会をする辺り仕方ないのかもしれない。
その中心で大きな声で笑いながら、数人の女の子と楽しそうに話している人物。
……今まで色々な合コンを先輩としてきたけれど、相変わらず女の子にもてるよなぁ。
先輩はいつも話題の中心にいて、男女を問わず人気がある。
だから僕はそんな先輩に声を掛けるのが酷く億劫になり、端っこに混ぜて貰おうとする。
そうするといつも先輩は、そんな僕を目敏く見つけちゃうんだよ。
「あっ! 遅いぞ! お前!」
……ほらね。
仁王立ちで僕を指差すな。
女の子のみならず、知り合いの男まで、皆一気に僕を見た。
ああもう。急いで出て来たから、適当な格好してきたんだよ。
長袖の白いワイシャツに、緑のチェックのネルシャツを羽織って、ノーブランドの黒いジーパンとスニーカーなんだよ。
そんなにマジマジと見ないでくれ。
僕はとりあえず周囲に向かって会釈だけすると、靴を脱いでシートの上に上がり、先輩の下へ歩いて行く。
「遅かったじゃないか。電話してから10分は経ってるぞ。もう一度電話しようとしたんだぞ」
先輩は酔っ払っているのか、呂律の回らない口調でまくし立ててくる。
「だから格好も考えずに早く来たじゃないですか。先輩は自分は20分も遅刻してくる癖に、人が遅れるのが許せないんだから」
この問答もいつもと変わらない。
二ヶ月会っていない筈なのに、この偉そうな口調も全く変わっていない。
僕がぶつぶつ文句を言うと、先輩はシートに座り直して、自身の右を空けると隙間を叩いた。
「ほら、ここ座れ」
当たり前の様に言い放つ。
だからそっちに座ったら、女の子と隣になれないでしょうが。
しかもシートの端っこだから、正面に女の子がいない。
「……」
何とか気付いて欲しくて、無言で睨み付けても、先輩はヘラヘラと笑って、自身の太股を叩いた。
「お? 何なら俺の上でもいいんだぞ?」
「何の冗談ですか。先輩の上に座るなんてゴメンですよ」
眉を寄せて文句を言うと、女の子が怖い、と口々に囁いて冗談交じりに笑う。
……いつもこうだ。
先輩が僕を茶化して、それに僕が怒って、女の子が怖がって、僕はいつも合コンで失敗する。
先輩は僕を合コンに誘う癖に、いっつも僕を女の子の隣に座らせてくれない。
意味が解らない。
……もういい。
いっそ先輩の上に座ってやろうかと思ったけれど、そこまで度胸の無い僕は渋々、先輩の右隣に腰を降ろした。
「よし。注いでくれ」
当たり前の様に人に酌させないで下さい。
目の前や隣に女の子がいるでしょうが。
女の子に酌して貰った方が嬉しいんじゃないですか?
まぁ断っても無駄だな。
僕は諦めると手近に届くビールの缶を持って、先輩に酌をしてやった。
「おおっ。よし。お前にもしてやる」
先輩は偉そうに笑うと、紙コップを僕に手渡して、酌をしてくれた。
「どうも……」
短くお礼を言うと、ビールを足元に置く。
手の届く所にビールがあるんなら、自分でやれよ、もう。
「乾杯っ」
「かんぱい」
先輩がコップを合わせてきたので、溜め息を付きながらコップを合わせた。
一気にビールを煽る。
「くう〜〜」
何も食べてなかったから、空きっ腹にビールが染みるなぁ。
余りお酒に強い方じゃないけど、やっぱり飲むのは好きかな。
思わず頬を緩めていると、そんな僕を見て先輩も笑った。
「はは。変わってないな。ビールを美味そうに飲む所」
「先輩だって、何も変わってないですよ」
服装だって、学生の時の様に、前が大きく開いた黒いワイシャツに、黒いストレッチパンツ。
髪の毛は金色で、無精髭に、咥え煙草。
真面目な僕の容姿とは半比例なその出で立ち。
相変わらず派手な人間関係なんだろうなぁ。
「先輩、本気になっちゃう女の子もいるんだから、軽薄な態度で女の子に声掛けたら駄目ですよ。」
酒が入ると直ぐに女の子を口説き出すからな。
しかも軽い気持ちで口説くから、本人に全くその気はない。
でも人によっては本気になっちゃう子もいるから、責められていたのも散々見たし。
結局は先輩と一緒に釣るんでいると思われる、僕が慰めてあげるんだぞ。
釘を差しておくと、先輩は一瞬瞳を見開いてクスクスと笑う。
「そんな所も変わってないな。相変わらず真面目だなぁ。お前女に騙されてないか?」
「騙されるも何も、会社が忙しくて、彼女を作る暇もありません」
まぁ学生時代、尽く先輩に邪魔されて、彼女を作る事なんて出来なかったけど。
適当につまみを食べながら答えると、先輩は僕の肩をぽんと優しく叩いた。
「そっか。忙しいのか。今度愛情のこもった料理を作ってやるよ」
「……料理続けているんですか」
熱し易く覚め易い先輩が珍しい。
「おうよ。こんなナリでもレストランに勤務してるもんね」
こんな金髪でも雇ってくれる所があるんだ。
先輩は学生の頃から料理人になる、と意気込んで、料理ばっかり作っていたけど冗談だと思っていたよ。
本当に料理人になっているとは思っていなかった。
先輩は卒業した後も職を転々としてて、自由奔放にやっていた人なのに。
物珍しそうに先輩を見つめていると、先輩は煙草を振りながらニヤリと笑う。
「俺だって真面目な時もあるのよ。今度喰いに来いよ。奢ってやる」
「ちゃんと払います。駄目です」
「相変わらず真面目なのな〜〜」
「僕は真面目に生きるんです」
「真面目ちゃんは嫌われるよ〜〜?」
「それで嫌うなら嫌えばいいですよ」
これもいつもと変わらない僕と先輩のやり取り。
女の子と話している訳じゃないのに。
気紛れで自由奔放で人を振り回す厄介な人と話しているのに。
困った。凄い楽しい。
何だか変わらないこの会話に酷くホッとする。
でも僕はそんな気持ちを少しも表面に出さず、仏頂面でビールを煽った。
「そんな仏頂面の君に素敵な情報! はい。携帯機種変しましたぁ」
先輩はめげずにニッコリと微笑んで、僕に携帯を差し出す。
「もう。そんな事より、周りの女の子紹介して下さいよ」
「ええ! 俺の携帯見てよ!」
もう、この人は子供なんだから!
そうやって目の前に差し出してくるなっ。
「もうっ」
余りにも携帯が近過ぎた為に、先輩の待ち受け画面が見えてしまった。
それは女の子でも風景でもなく、再会する前に飲み会をしたメンバーの姿。
僕が笑顔で映っている数少ない写真でもある。
……絶対わざとやってるだろ。
酔っ払ってるなんて嘘に決まってる。
でも素直に嬉しい。
「ああ、もういいや。はいはいはい。諦めますよ、諦めればいいんでしょう。携帯見せて下さい」
「うっし。俺の新携帯をとくと見よ!」
「勤め先の店も教えて下さいね。行きますから」
「仕方ないから教えてやろう」
腕を組んで偉そうに笑った先輩に僕は諦めた様に笑った。
結局、今日も彼女は出来そうにない。
でも楽しいからいいか。
僕は手酌でビールを注ぐと、先輩の携帯自慢を聞く事にした。
END
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