I got the fascinating novel.
Writer's name is negima Makino.





「楽園への道程」









「結局爆睡かよ」
 正は文句を呟くと、縁側で気持ち良さそうに、深い寝息を立てている雅也を見下ろした。
 この一軒家に住んでいる人間の一人。
 フルネームを草壁雅也と言う。
 正と同じ学校に通う、高校2年生だ。
 縁側へと射し込む太陽の陽射しは暖かく、風も優しくて柔らかい。
 縁側から見渡せる庭には、色取り取りの草花が芽を出していた。
 正に小春日和と言った天候。
 それなのに正の表情は険しかった。
「お前以外は皆出掛けてるんだろ。オレは他人だぞ」
 正は起きないと解っていつつも、雅也に話し掛ける。
 雅也は心地良さそうに春風に吹かれながら、口元を緩めて眠っていた。
 正が家に遊びに来てから少しの間は、ゆっくりだけど返答はあったのに、しばらくして返答が返ってこなくなり、訝しげに視線を降ろしたら、案の定熟睡していたのである。
 もうこうなると雅也が起きないのは、付き合いで解っていた。
 雅也は学校に眠りに来ているのかと思う程、いつでも何処でも眠る。
 雅也が起きている時は、体育の授業の時と、教室を移動中の時だけだ。
 だから席が近い正がいつも、雅也を起こしてやる。
 最近では教師が正に、雅也を起こして欲しいと言う程だ。
 雅也は寝汚くて、ちょっと怒鳴った位じゃ起きない。
 そして起こし方が悪いと、非常に機嫌が悪くなる。
 だから雅也の事を熟知している正が結局いつも雅也を起こす役になる。
 今は無理に起こす必要は無い。
 正はそう判断すると、熟睡している雅也を睨み付けた。
「少しは警戒しろよ。何か盗られるかもしれないんだぞ」
 正が話し掛けても、雅也はずっと眠り続けている。
 その表情は無邪気そのもので、正は益々機嫌が悪くなった。
 雅也は最初から正に対して、警戒心という物がなかったのである。
 学年が2年に上がり、新学期が始まったのだが、いつも隣の席の人間は眠っていた。
 正はそんな雅也の姿勢が気に入らなくて、初対面だったけれど、雅也を起こしたのだ。
 その時に雅也は正を真っ直ぐに見詰めて、柔らかく優しく微笑んだ。
 それからと言うもの、雅也は正に何でも話してきた。
 どんな事も包み隠さず、警戒心も全く抱く事なしに、正をこの家に呼んだりした。
 正は何故雅也がそこまで、自分に警戒心がないのか検討が付かない。
 もう少し人を疑ってもいいと思う。
 もう少し用心してもいいと思う。
 でないと雅也はいつか痛い目に遭う。
「もっとオレを疑え。オレはお前が思っている程善人じゃない」
 正がぶつぶつと文句を言うと、不意に雅也が口元をむにゅむにゅとさせて寝返りを打つ。
 その無邪気な表情に思わず、正は吹き出してしまった。
「ぷっ。ったく、緊張感の無いヤツ……」
 正はそのままクスクスと小さく笑い続けると、雅也の髪の毛に触れた。
 雅也の髪の毛は柔らかくて暖かい。
 正はそんな雅也の髪の毛を優しく梳いてやりながら、優しく微笑んでひっそりと囁いた。
「お前は無邪気で真っ直ぐで穢れがない。だからお前を全ての穢れから守ってやる」
 更に小さな声で誓いの様に呟く。
「お前を誰にも穢させはしない」
 余りのクサイ台詞に自分自身で恥かしくなったのか、正は照れる様に空いている手で頭をかいた。
 ふと雅也を見ると、雅也は聞こえているのかいないのか、柔らかく微笑んでいる。
「呑気なもんだな」
 正はもう一度笑うと、雅也から手を離した。
 すると雅也は反応するかの様に、正の服の裾を握る。
 正は苦笑して、離した手を戻すと、雅也の髪の毛を優しく梳いてやったのだった。


END











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